Tea系の薔薇は、ヨーロッパでは19世紀後半の主要なガーデンローズでしたが、
その花色がパステル調の中間色が多かった所為で、またアルカリ性の強いヨーロッパ特有の
貧弱な土壌での栽培だった故、無事冬を越す事が難しく、以上の理由から前々世紀末より
次第にその地位をHPやHTにとって変られて行きました。
また総じて西洋人には、はっきりとした花色・豪華さを好む趣向が強く、Tea特有の花色の
微妙なニュアンス…うなだれて咲く花首の弱さは欠点としか評価されなかった様です。
しかし…いにしえよりたおやかで儚く、且つ清冽なものに美を見出して来た日本人にとっては、
Teaの花こそが最も日本的な薔薇として目に映るでは?と日頃より感慨を抱いている次第です。
Tea系の薔薇は、我国ではすでに幕末頃から横浜の山手界隈で主に英国人の手に依て
栽培されていました。ただ明治〜戦前を通じて、薔薇は大変高価な花木で一般庶民には
手の届かない高根の花だった様です。そんな事情から、また関東大震災や戦災等で
外国から持ち込まれた殆どのTea Roseは失われてしまい、現在でもまだ一般的に
知られ栽培されている品種は非常に限られています。 20世紀初頭には世界中に
約1000種類以上存在していた、その大半の品種が行方不明になってしまい
Tea=幻の薔薇の感が否めません。当方はその保存・繁殖を通じて、
この一連の薔薇の復活・復権を心より願っています。
以上の理由から、この系統の薔薇に関する我国の参考資料は、大変残念ですが
皆無と申し上げても過言ではありません。また若干残されている戦前の資料は
全て品種名を和名で記載されており、未だその和名の正式な品種名が
特定されている品種は、数少ないのが実情です。
※「Tea Rose: Old Roses for Warm Gardens」 オーストラリア版洋書
多分世界唯一?(学術書を除く)の専門書だと思います。
ハイレベルの良書で情報量も充実しています。